助成金と補助金の違い

助成金と補助金の違い

よくご質問をいただくのが、「助成金」と「補助金」についての違いです。どちらも国や自治体から交付される返済不要のお金ですので、その内容についても同じようなものと混同されている方が多くいらっしゃいます。実際には様々な違いがあるのですが、主に「助成金」は「人」に関する取り組みを行うケースに対して支給されます。

一方、「補助金」は「事業」に関して新しい取り組みを行うケースで支給されるお金ということになります。もう少し詳しくまとめると次のような違いがあります。

  助成金 補助金
管轄の機関 厚生労働省 経済産業省・地方自治体
財源 雇用保険料 法人税
目的 雇用の維持、新規雇用や労働環境の整備、仕事と家庭の両立支援、人材の教育訓練、といった会社の「人」に関わる課題の改善に取り組んだ場合に支給されます。 新規事業、ITシステムを導入して業務の効率化を図りたいなど、会社の「事業」に関わる新しい政策の促進やサポートが主な目的。
審査 定められた要件をクリアすればもらえる 採択のハードルが高い 予算や採択件数に限りがあるため、優秀な事業計画を提出する必要がある
公募期間 通年 年に数回、数週間程度の公募期間しかない
専門家 社会保険労務士 行政書士や中小企業診断士
税理士など

このように、厚生労働省が管轄している「助成金」は「人」に関する取り組みを行った場合に支給されるものですから、その申請には出勤簿や賃金台帳のほか、就業規則や労使協定などの書類の提出がほぼ必須ということになります。

また、適切に残業代を支払っているか、など、労働基準法の遵守についても審査が及びます。よって、「助成金」の書類作成および申請の代行は労務関係の専門家である社会保険労務士の独占業務となっており、社労士資格の無い人や業者が作成・申請を代行することはできません。

中には資格のないコンサルタントなどが「必ずもらえる」といって申請を促し、詐欺や不正受給に巻き込まれるケースもありますので、ご相談をされる際にはしっかりとその方の専門を確認するよう注意してください。

「助成金」の申請代行は社会保険労務士の専門分野ですので、お気軽にお問合せください。


起業時におすすめの助成金

これから新規事業を始めたい、新しく会社を設立したいとお考えの場合に、「せっかくなら助成金を活用しながら社内の整備を行っていきたい」と思われるケースも多いのではないでしょうか。

特に新しく人を雇用するといった場合には、転職サイトに掲載したり選考を行う際の採用経費、その後の人材教育、福利厚生費、定期的な賃金アップの原資など、様々なお金がかかってしまいます。

こういった従業員の就業環境を整えていくための資金の補填として役立つのが、次のような助成金です。

①キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期契約社員やパート等の非正規雇用の労働者を正社員に登用したり、処遇改善を実施した事業主に支給される助成金です。キャリアアップ助成金には7つのコースがあり、コースごとに取り組む内容や金額が異なっています。

  • 正社員化コース
  • 賃金規定改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 諸手当制度等共通化コース
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース


②特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は高年齢者や障害者、母子家庭の母等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。2つのコースがあり、対象者が高年齢者の場合、年齢に応じて内容が分かれています。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)


★こんなときに

・事業も軌道にのってきた、従業員の意欲や能力も評価できるので、当初は非正規雇用であった有期契約社員やパートタイマーを正社員登用したい。

⇒正社員化コースがおすすめです。

受給内容の概要

正規雇用等へ転換後6か月間の※賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させている、という取り組みが必要です。

※基本及び定額で支給される諸手当を含む賃金の総額。

  1. 有期 → 正規:1人当たり 57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
  2. 有期 → 無期:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
  3. 無期 → 正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
    <①~③合わせて、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで>
    ※< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額



・事業も軌道にのってきた、有期契約社員やパートタイマーについても職務評価を行い賃金アップを検討したい

⇒ 賃金規定等改定コースがおすすめです

受給内容の概要

基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給を実施することが必要です。その際に、対象者の職務評価も行うと金額の加算があります。

  • すべての有期雇用労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合

対象労働者数
1人~3人 :1事業所当たり 95,000円 <12万円>( 71,250円<90,000円>)
4人~6人 :1事業所当たり 19万円 <24万円>(14万2,500円 <18万円>)
7人~10人 :1事業所当たり28万5,000円 <36万円>( 19万円 <24万円>)
11人~100人 :1人当たり 28,500円<36,000円>( 19,000円<24,000円>)

  • 一部の賃金規定等を2%以上増額改定した場合

対象労働者数
1人~3人 :1事業所当たり 47,500円<60,000円>(33,250円<42,000円>)
4人~6人 :1事業所当たり 95,000円 <12万円>(71,250円<90,000円>)
7人~10人 :1事業所当たり14万2,500円 <18万円>(95,000円 <12万円>)
11人~100人 :1人当たり 14,250円<18,000円>( 9,500円<12,000円>)
<1年度1事業所当たり100人まで、申請回数は1年度1回のみ>

※ 中小企業において3%以上5%未満増額改定した場合に助成額を加算
・すべての賃金規定等改定:1人当たり14,250円<18,000円> ・一部の賃金規定等改定:1人当たり 7,600円 <9,600円>
※ 中小企業において5%以上増額改定した場合に助成額を加算
・すべての賃金規定等改定:1人当たり23,750円<30,000円> ・一部の賃金規定等改定:1人当たり12,350円<15,600円>
※ 職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合
1事業所当たり19万円<24万円>(14万2,500円<18万円>)を加算 <1事業所当たり1回のみ>

・一定の売上が見込めるようになったので、正社員と同様に有期契約社員やパートタイマーにも賞与を支給してあげたい

・従業員の健康管理のために、有期契約社員やパートタイマーにも健康診断を実施したい。

⇒ 諸手当制度等共通化コースがおすすめです。

受給内容の概要

(ア)賞与(イ)家族手当(ウ)住宅手当(エ)退職金のいずれかの諸手当制度を新たに設け、運用する。

健康診断については、労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等のうち、 事業主に実施が義務付けられていない有期雇用労働者等に雇入時健康診断もしくは定期健康診断を実施する制度またはその雇用する有期雇用労働者等に人間ドックを実施する制度を新たに設け、延べ4人以上にたいして実施することが必要です。

1事業所当たり38万円<48万円>(28万5,000円<36万円>)

 <1事業所当たり1回のみ>
※共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額を加算(※) (加算の対象となる手当は、対象労働者が最も多い手当1つとなります。)
・対象労働者1人当たり15,000円<18,000円>(12,000円<14,000円>)

 <上限20人まで>
※有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合は除きます。

※同時に共通化した諸手当(2つ目以降)について、助成額を加算 (原則、同時に支給等した諸手当について、加算の対象となります。)
・諸手当の数1つ当たり16万円<19万2,000円>(12万円<14万4,000円>)

 <上限4手当まで>


・事業も軌道に乗り忙しくなってきたので、人員を増やそうか迷っている。そんな中、ちょうど短時間勤務のパートタイム従業員が「子育てが落ち着いたので勤務時間を延長しても問題ない」と言ってくれている。それなら、既存の従業員が柔軟に働けるような仕組みを設けたい。

⇒ 短時間労働者労働時間延長コースがおすすめです。

受給内容の概要

短時間労働者の週所定労働時間を延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者とする取り組みを行う必要があります。

短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合。

1人当たり22万5,000円<28万4,000円>(16万9,000円<21万3,000円>)

※令和4年9月30日までの間、支給額を増額しています。

・高年齢者や母子家庭の母等も積極的に雇用していきたい。

⇒ 特定求職者雇用開発助成金がおすすめです。

受給内容の概要

高年齢者や障害者、母子家庭の母等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる。

<特定就職困難者コース>

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外の者 [1]高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 60万円
(50万円)
1年 (1年) 30万円 × 2期
(25万円 × 2期)
[2]重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円
(50万円)
2年 (1年) 30万円 × 4期
(25万円 × 2期)
[3]重度障害者等 240万円
(100万円)
3年 (1年6か月) 40万円 × 6期
(33万円※× 3期)
※第3期の支給額は34万円
短時間労働者 [4] 高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 40万円
(
30万円)
1年 (1年) 20万円 × 2期
  (15万円 × 2期)
[5]重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 80万円
(
30万円)
2年 (1年) 20万円 × 4期
  (15万円 × 2期)

<生涯現役コース 満65歳以上の離職者が対象>

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外の者 70万円
(
60万円)
1年
(1年)
35万円 × 2期
(30万円 × 2期)
短時間労働者 50万円
(
40万円)
1年
(1年)
25万円 × 2期
(20万円 × 2期)

注;( )内は中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間です。

ご紹介している内容以外にも、細かい要件や例外、受給できる金額に違いがございますので、受給をお考えの場合はお気軽にご相談ください。

助成金申請を社労士に依頼するメリット

助成金は人を雇用する、人材を育成する、社内環境を整備するという目的で創設されているものがほとんどですので、申請を行う際には、単に申請書類の作成というだけでなく、労働基準法や人事・労務管理の専門的な観点で内容を精査する必要がございます。

また、提出書類そのものも非常に多くの枚数を提出しなければならない場合が多く、時間がかかるというのもなかなか面倒なところだと思います。

そこで、助成金を受給するための申請手続きを自社で行うか、社労士に依頼するかお悩みの皆さんのために助成金申請を社労士に依頼するメリットは具体的にどのようなものがあるか、以下でご紹介させていただきます。


① 就業規則や法定帳簿の整備も安心して任せられる

事業主は、雇用契約書をはじめとした労働者の入退社に関する様々な書類の他、賃金台帳などを整える義務があります。また、従業員数が10名以上になれば、就業規則を作成し届け出なければなりません。

助成金の申請に限っていえば、従業員数が10人未満であっても就業規則を作成し、必要な取り組み内容に関する規定を入れる必要があるケースが大半です。そして、当然、これらの帳簿や賃金台帳の内容は労働基準法を遵守していることが大前提です。

助成金の申請を検討するとき、申請書類作成そのもの以外のこういった労務環境のチェックが必ず必要になってまいります。もちろん、お近くの労働基準監督署や労働局でも相談に乗ってくれますが、会社の経営方針に照らし合わせた細かい部分まで判断してくれるものではありません。

労務管理のプロである社会保険労務士に依頼することで、最新の法律に基づいた労務環境の整備とともに、会社のカラーに合った取り組み方のご提案、従業員とトラブルになりやすいポイントにいたるまで、多角的な視点で申請準備や改善を行っていただくことができます。

自社で作成した就業規則があるので、助成金の申請時にもそのまま添付したところ、最新の法改正内容を網羅したものになっておらず、不支給になってしまったというようなケースはよくありがちです。


② 詐欺や不正受給などのトラブルに巻き込まれるのを防ぐ

このところ、助成金の申請をしきりに呼びかけるコンサルタント業者が増えており、悪質な業者になると不正受給を促したり、多額の着手金を振り込ませた後、音沙汰なしという詐欺をはたらくケースも増えております。

「どんな会社でも必ず受給できます」「助成金は儲かりますよ」というような甘い言葉につい飛びつきたくなるお気持ちも分かりますが、何の苦労もなくもらえる助成金などありません。

例えば、実際には社員研修を実施していないにも関わらず、実施したかのように偽って、嘘の日報を作成したり研修費用の架空の領収書を添付して助成金を騙し取る、というようなケース。

「書類の作成もこちらでうまくやれます」と言われコンサル業者に丸投げしていたので知らなかった、故意ではなかったと主張される事業主もいらっしゃいますが、たとえ知らなかったとしても不正受給のペナルティは免れません。

*ペナルティの内容

助成金の不正受給が発覚した場合は、その不正受給に関する助成金が不支給となることはもちろん、今後3年間は雇用関係の助成金は一切申請できません。

また、事業所名が公表されることになりますので(事業主の名称、代表者氏名、事業所の名称、所在地、概要、不正受給の金額・内容等)会社の信頼に大きな傷がつきます。悪質な場合には刑事告発され実刑になるケースも十分にあり得ます。

*助成金の書類作成や申請代行ができるのは「社会保険労務士」だけ

そもそも、助成金の書類作成や申請の代行ができるのは労務管理や労働関係法令に精通した国家資格を有する「社会保険労務士」のみ、ということが法律で規定されています。社労士資格の無いものが助成金の書類作成や申請代行を行うこと自体が違法になっているので、要注意です。実際の申請については社労士と直接契約ができるのか必ず確認を行いましょう。

そもそも助成金は会社が儲けるためのものではありません。積極的に従業員の待遇を改善したり必要な教育訓練に取り組んだ企業に対して、報奨という意味合いでその費用を補助するために支給されるものです。

事業主が助成金の詳細について知識が乏しいことをいいことに、適当な説明しか行わないケースも散見されますので、トラブルに巻き込まれるのを防ぐためにも社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めしております。


③ 本業に専念できる

すでにご紹介のとおり、助成金の申請には様々な書類作成や専門的な知識が必要になってまいります。お客様自身が一から助成金の内容を調べるために細かい手引きを読み込んだり、労働局の窓口に何度も足を運んで質問したり、慣れない書類の作成に手間取ったりと、非常に多くの時間がとられてしまいます。

当事務所では申請に必要な書類作成や提出代行だけではなく、就業規則や雇用契約書といった周辺書類の整備、改正内容の最新の情報収集、助成金窓口との折衝など全てをトータルサポートさせていただきますので、お客様に余計なお手間を取らせません。お客様の貴重なお時間を無駄にすることなく本業に専念することができます。


④申請までのスケジュール管理を任せられる

助成金によっては、まず最初に計画届を提出して、その後に必要な取り組みを行い、いつまでに就業規則に明記して、申請書類の提出は更にその半年後…、というように様々なスケジュール管理が非常に重要になってまいります。

たった1日、取り組みの内容が前後してしまったり書類の提出が遅れただけで不支給になってしまうケースも少なくありません。

当事務所ではお客様の助成金申請のスケジュール管理も行っておりますので、煩わしいスケジュール管理に悩まされることがなくなります。必要なことは当事務所から早めにご案内させていただきますので、ついうっかり提出し忘れた、ということも防げます。

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